刑事コロンボの日本語吹き替え版を観ていると、途中で音声が変わるところが多々あります。
昔風のちょっとノイズがかった音声だなと思っていたのが急にクリアになったり、しゃべっている声に艶がなくなったり、はたまた別人の声になったり…
どうしてこんな事が起こるんでしょう!?
それは…
急に音質が変わるのはどういうワケ?
刑事コロンボはアメリカ本国では元々、NBCサンデーミステリームービーという月1交代の番組枠内で放送されていました。
日本のドラマと違って収録時間もまちまち。
75分前後のものや95分前後のもの、98分のものなど様々あったんですが、日本で放送する際は日本の間尺に合わせないといけません。
なのでできるだけ本編に支障のない部分をカットするなどして編集し、放送していたわけです。
当然日本語吹き替えの際にもその編集後のフィルムが使われ、声優はカットされた部分にはノータッチというわけなんですね。
近年、DVDやブルーレイという非常にありがたいものが普及して、むかしの番組がそのまま収録されたものが世に出始めました。
外国作品なら当然原音…アメリカのものは英語の音声ですね、これに加え日本語吹き替えの入ったものもあります。
刑事コロンボにおいても同じ、原音も吹き替えも両方入ったノーカット版がありますが…当然テレビ放送の際にカットされている部分には、日本語吹き替えされたものは入っていません。
TVで使われていたものをそのままDVDやブルーレイに収めてるんだから当然です。
そこで、モノによってはテレビ放送時にカットされていた部分は原音で流れる作品があります。
「今まで日本語でしゃべってた登場人物が、いきなり字幕付きの英語になっちゃったよ!」
という事例がこれですね。
刑事コロンボの場合はそのへんお金をかけています。
DVDやブルーレイでは、テレビでカットされていた部分の日本語は再収録という形でセリフも追加翻訳し、声優を呼んで新たに録音しているんです。
ただですね…刑事コロンボって一番最近のものでも2003年ごろの作品ですよ。
しかも放送でカットされてたのは旧シリーズがほとんど。
大半が70年代に録音されたものなんです。
旧シリーズの追加収録も今から20年くらい前に行われたものでしょうが、それでもテレビの放送から結構な時が過ぎてますから。
声優さんのほとんどが当時のような若々しさがなくなっているか、貫禄が出すぎてるかなんですよね。
…声は同じなのに艶がない、ずいぶん落ち着いた低い声になってるとか感じるのはそのためです。
むかしの音声がノイズが入って聞こえるのに、急にクリアになるのは新録部分だから。
中にはカットされてる部分にしか登場しない人物もいたりしますからね。初めて見るキャラが出てくる場面だけ取ってつけたようないい音声が流れることもあるわけです。
別の声優がやってるのはなぜ?
そして急に別人の声になるのは、当時担当していた声優が新録では使えなかったりして代わりの人がやっているから。
その理由として、当時の声優が他界している(何十年も前の作品ですからね)・役者を引退している・ギャラが高くなりすぎたとかスケジュールが合わないなどの都合などがあります。
殆どの場合が、すでに亡くなっていると言うケースですね。
主役の小池朝雄さんがそうですよね。
代わって銀河万丈さんが演じています。
パイロット版である「死者の身代金」で犯人役のリー・グラントの吹き替えを担当した山東昭子さんは早々に参議院議員になってたんで、当然追加収録は不可能です。
「忘れられたスター」のジャネット・リーの吹き替えは元宝塚歌劇団の鳳八千代さんでした。
そして「祝砲の挽歌」や「仮面の男」の犯人役・パトリック・マクグーハンは佐野浅夫さん。
ともにご健在ですが、ちょっとした追加くらいでは使えなかったんでしょうねえ。
それぞれ“声優さん”として知られている方々が吹き替えしています。
同じように伊武雅之(現・伊武雅刀)さんも別の人がやってます。おそらくこの方もギャラの関係でしょう。
平田昭彦さんや小林昭二さんなんて、もう亡くなったあとだったんでしょうしねえ…
あぁ、ひとつ忘れてました!
もちろん日本語吹き替え版においてのことですが、実は刑事コロンボには、新録版と旧録版の2種類が存在する話があるんです。
▪ 悪の温室
▪ 自縛の紐
▪ 黒のエチュード
▪ 策謀の結末
それが上記の4つです。
「刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX」に収録されているこれら4つのみ、旧音声版でカットされてる部分は追加音声の収録はなく、日本語字幕と原音のみになっています。
さすがにここまでは、コンプリートブルーレイBOXといえども実現できなかったようです…
あ、新録版の方はちゃんと追加音声入ってますからね。
さて最後に、僕には以前からひとつ疑問がありました。
それは、小池朝雄氏が亡くなったあとのコロンボの追加音声を、なぜ石田太郎氏でやらなかったのかということです。
追加だから雰囲気の似た声優ということで銀河氏を起用したんでしょうか。
他の登場人物の追加音声も、あまり声質とか重要視せず起用してるみたいだし…
やっぱり、追加にそんなお金かけられないから、日本語に吹き替えしてるだけで大目に見てよって感じなんでしょうかねぇ…
まあ、銀河万丈さんのコロンボって、特に僕は違和感ないからいいですけど。