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刑事コロンボの王道パターンを破った作品って何がある?

これから観ようと思ってる人にはネタバレ的な部分もあるのでご注意!

刑事コロンボの基本パターンと言えば、倒叙法を使って話が進行するということですね。
物語の冒頭で犯人が被害者を殺す…そのやり方も犯人そのものも視聴者にわからせると言うやり方です。
“誰が”ではないので犯人当てミステリーではないし、“どうやって”というものでもありません。

いかに自供させるか・追い詰めてボロを出させるかと言う、犯人と刑事コロンボの駆け引きを描いた「チェス」のようなものと言っていいでしょう。

で、今回ご紹介するのは、そんな王道と言っていいパターンを破った作品についてです。

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旧作で型破りの展開をする作品「さらば提督」

旧作品で有名だったのが「さらば提督」ですね。
話の序盤に殺される提督はロバート・ヴォーン演じる義理の息子チャーリー・クレイの仕業…とおもわれますが、実際にクレイが殺す描写はなく、彼は凶器としてに使われたものや現場の始末をしているだけです。そして話の終盤、クレイ自身も何者かに殺されます。

クレイは誰に殺されたのか?提督を殺したのは本当にクレイなのか?と言う、出だしこそいつものパターンながら、実は犯人探しといった倒叙法パターン破りの展開になっています。

この作品の最後では謎解き場面とも言えるシーンがあります。
アガサ・クリスティのようにコロンボが関係者を一同に集め、部下の刑事たちと事件を考察、最後に真犯人を指摘するというもの。
初の展開だから驚きがありましたね。

さて、実は新・刑事コロンボの中には王道を破った話が多くあるんですよね。
もう倒叙法と言う手法とは縁遠い話がたくさん。

従来のパターンに近いかな?ちょっとひねってるな、というものから、「刑事コロンボ」とは思えない話…ふつうの刑事ドラマの登場人物にコロンボが出てきたみたいな話も存在します。

具体的に挙げてみると…
▪ 奇妙な助っ人
▪ 死者のギャンブル
▪ マリブビーチ殺人事件
▪ だまされたコロンボ
▪ かみさんよ、安らかに
▪ 死を呼ぶジグソー
▪ 初夜に消えた花嫁

などです。

前半は倒叙法、後半は驚きの展開「奇妙な助っ人」

実の弟を殺した牧場経営者・グラハム・マクヴェイが、弟に多額の金を貸しているロマーノに弟殺しの罪を着せ、さらに正当防衛として彼を射殺します。

弟を殺したのは金を貸したロマーノ。ロマーノを殺ったのはマクヴェイ自身、でも正当防衛。
で、それを検証するのにコロンボがやってきます。
ここまでは普通の流れですね。

でも後半は第三者が介入してくるわけですよ。

殺されたロマーノと仕事上の付き合いがあるという“その筋のボス”・フォテーリ。
ロマーノを正当防衛と言う名目で殺したマクヴェイが弟殺しの犯人で、その罪をロマーノに着せようとしていると、マクヴェイ自身にも脅しをかけ、コロンボにもマクヴェイにきっちり落とし前をつけさせるよう話すんですね。

猶予をやるが長くは待たない、時間がかかるようなら自分がかたをつけるというわけです。

コロンボシリーズの犯人にしては珍しく、脅された、殺されてしまうからなんとかしろとコロンボに泣きついてきます。

終盤にはコロンボともどもフォテーリの一味に殴られ拉致されて、コロンボ自身も「このまま退くか命を危険に晒すか」の選択をせまられます。

で、最後には…タイトルにある「奇妙な“助っ人”」のとおり、うまい具合に事件解決に結びつくんですがね。
全体的には旧シリーズの流れですが、第三勢力の関与で事件解決という、ちょっとかわった話でした。

殺しの計画者も被害者も複数登場する「死者のギャンブル」

ギャンブル狂のハロルドが、フットボールチームのオーナーである叔父の遺産を狙って車にパイプ爆弾を仕掛けて殺そうとします。
ところが叔父は車に乗ることなく、その前にジョギング中のひき逃げ事故により死んでしまうんです。

必要なくなった爆弾をなんとかしようとするハロルドと悲しみに暮れる叔母のもとにマスコミも押しかけてくるんですが、叔父の車があると邪魔になるから移動させようとした庭師が爆弾で吹っ飛んでしまいます。

さらに叔父をひき逃げしたのは庭師の車で、叔父を殺そうとしていたハロルドも殺されてしまうという展開。

冒頭での爆弾作りと叔父殺しの計画というのは旧シリーズの流れですが、このエピソードもまた犯人たるべき人物が被害者の一人になってしまうという、フーダニット(誰が殺ったか)・真犯人探しの作品です。

犯人が犯人ではなく、振り出しに戻る「マリブビーチ殺人事件」

ベストセラー作家・テレサの財産目当てで結婚を迫るウェイン・ジェニングスは、他に何人も愛人を持つ浮気症の男。
ある晩、テレサからの浮気をなじる怒りの電話で結婚が絶望的になったウェインは、彼女の自宅に向かい、金庫の前にかがみ込むテレサに銃弾を放ちます。

コロンボが来て捜査していくうちに、日頃ウェインの素行を不審に思っていたテレサの姉・ジェスが雇った探偵の証言もあり、テレサ殺しの晩に現場にいたのはウェインということが発覚して彼は逮捕されるんですが…

ここまでは旧シリーズと比べると殺しは計画性のない突発的なもの。
で、犯人の捕まるのも早すぎます。

ここからがこの話のパターン破りなところで、じつはウェインが撃つ前にテレサは別の中で撃たれて死んでいたということがわかるんです。

じゃあ一体、テレサ殺しの犯人は誰か?
犯人と思った人物が犯人じゃない、またまた振り出しに戻って真犯人探しの展開になるんですが、このエピソードはちょっとひねって作り込んでます。

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コロンボが利用されるという珍しいエピソード「だまされたコロンボ」

この話はほぼネタバレ的になりますが…
人気男性誌のフォトグラファー・ショーン・ブラントリーは、モデルたち侍らせて街で金を使いまくるといった売れっ子。
ショーンの行動に不満を持つ、共同経営者で恋人のダイアン・ハンターがある日失踪します。

出版社を買い取りたいと交渉していた富豪・サー・マシューズにダイアンの失踪を調べるよう頼まれたコロンボが、まだ殺人事件と断定されてないのにどこかに死体があるということで捜査を開始。

誰かがダイアンになりすまして本当は死んでいるのにさも生きているように見せかけていると、防犯カメラの映像を手がかりに調べていくんですね。
一番の容疑者ショーンも、自分が殺したと言うんなら証拠や遺体を見せてみろと、自信たっぷりに言い放ちます。

で、マスコミも騒ぎ出して警察上層部でも問題視しているときに、当のダイアンが大勢の前に姿を現すんです。

本当は旅行に出かけてるだけなのに、死んだと大騒ぎして捜査したコロンボは見事に道化の役回りとなり、雑誌の注目度も売上げも上昇します。
これが最初からの狙いで、ショーンとダイアンははじめに秘書の前で派手にケンカをして見せ、殺人が起こってもおかしくないことを仕組む念の入れよう(クリスティっぽいですね)。

ここまで、殺人課のコロンボの担当する事件で、死体が出てきていないという前代未聞のエピソードですね。

で、ここからです。
ショーンとダイアンの前で、「買い取りに200万だそう」と言うサー・マシューズに対し、ショーンはそれでも売らないと断言しますが、ダイアンの方はドルじゃなくポンドでならと快諾。

利用されたのはあんたの方よとばかりに、ショーンを知り目にサー・マシューズと腕を組んで立ち去るんですよ。

さてこのあと、ショーンはダイアンを殺して、今度はホントに彼女が失踪したとコロンボに言います。
でもこの時コロンボは、ショーンがダイアンを殺したことに気づいてるんですね。
ようやくホントのコロンボが始まるといった展開です。

この、ショーンがダイアンを殺してからのシーンなんて、終盤も終盤、最後のどんでん返しといった作品でした。

回想シーンから始まる「かみさんよ、安らかに」

コロンボのカミさんの葬式から始まるという、これまでにはないパターンです。
もう死んだあとのシーンから始まり、その後、この殺しがどうやって行われたか?動機は?と言ったシーンが続きます。

当然犯人はもうわかっていて、そのやり方もわかってるんですが、話の運びが過去の回想と現在の交互進行となる初の試みです。

そして犯人の標的がコロンボであるというとこも斬新ですね。

犯人とは事件以外に接点のない主人公が、犯人の直接のターゲットになる点は王道から大いに外れています!

ちなみにカミさんの葬儀の話なのに、カミさんはこの回も姿を見せません…

初の原作付きエピソード「死を呼ぶジグソー」

僕の大好きな警察小説で60年代にTVドラマにもなった、エド・マクベイン原作の「87分署」シリースの1本、「はめ絵」を元にしたエピソード。

87分署という複数の刑事が登場する話が元になってるだけあって、この回のコロンボは本当にコロンボらしくありません!
87分署の映像化に加え、その登場人物をピーター・フォークが演じているという表現がぴったりでしょう。

この回で従来の刑事コロンボでの制作上のお約束ごとがいくつか覆されています。
署内のコロンボを見せない→登場初っ端から刑事部屋にいる
コロンボは拳銃を持たない→変装してリボルバーを構える
など。

まさに異例です。
帽子もかぶってパリッとしたスーツを着込んだり、マフィアにも扮装したり、殴られたりと、ほんとにコロンボらしくない型破り中の型破り作品でした。

内容は、手がかりとなる写真のピースを集めて回るというもので、この話も最後まで犯人のわからないフーダニットであるとだけ言っておきましょう。

殺される被害者の出てこない話「初夜に消えた花嫁」

これも87分署の1本、「命果てるまで」の映像化。
だからやっぱり刑事部屋が出てくる、コロンボが拳銃を手にすると言ったことの他に、犯人との直接的な接触がない(会話もない・対面もない)といった前代未聞のスタイルで終始します。
そして、いつものコロンボなら犯人に殺される被害者が登場するのに、この話では誘拐されるだけです。

コロンボは殺人課なのに誘拐?
それはこの事件の誘拐される被害者がコロンボの甥っ子(刑事)の花嫁だから。

コロンボは上司に頼み込んでこの誘拐事件の捜査を指揮します。
電話による聞き込みや刑事部屋での捜査会議、課長を伴って複数の刑事との出動といった、王道外れの1本です。

写真の手がかりから犯人とその家を絞り込み、突入して、最後の一瞬で犯人を射殺するといった点も、今までなかった展開ですね。

そうそう、数ある刑事コロンボのエピソード中、死ぬのは唯一人、それも犯人であるということも異例中の異例です。

刑事コロンボの面白いところは、地位も名誉もある上流の人物が保身や野心のために殺人を行い、それが自分よりも下に思ってる人間に暴かれるというところにあると思うんですがね。

端っからそれを期待してる人には新・コロンボの展開は馴染めないと感じるところもあるかもしれません。
本放送で見たときは僕もそう感じました。

でも改めて全く別のミステリーとして観て、その主人公をピーター・フォークがやってるんだと思えば…ある意味面白いかなと思います。

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