刑事ものに限らずドラマの原作として多いのはやはり小説ですね。
物によってはマンガや絵本が原作というのもあるでしょうが、刑事ドラマに関して言うと原作となっているのは小説でしょう。
原作小説をそのまま映像化したというのもあれば、登場人物の関係や設定等は、ある小説を元にしているというのもありますね。
原作をそのまま映像化したものには「警察署長」と言うミニシリーズがありました。
まあこれは刑事ではなく、タイトルのとおり警察の署長ですが…もう一つ、刑事もので言うなら「87分署」があります。
映画やドラマの原作となっている87分署
ミステリー作家で脚本も手がけるエド・マクベイン原作のこの87分署、60年代にそのままのタイトルと設定で映像化されていますが、小説のなん作品かはテレビドラマや映画の原作として使われています。
実はいろんな刑事ドラマの基本になっていて「ヒルストリート・ブルース」とか、日本のものだと太陽にほえろ!や7人の刑事は87分署ベースですね。
広い意味での、これら作品の原作と言えるでしょう。
刑事コロンボのエピソードにも2作品、87分署の原作を映像化したものがあります。
さて、テレビドラマの87分署は1961年に制作され、日本でも翌年62年に放送されました。
レギュラーにロバート・ランシング、ノーマン・フェル、ジーナ・ローランズなど5名が出演しています。
僕はまだこの時代、生まれていないので観たことはないんですが、原作小説の方は大ファンです。
テレビドラマの方は数えるほどしか刑事が出てきませんが、実は87分署捜査課には16名の刑事がいて、早番・遅番・夜勤と、シフト制で仕事をしてるんです。
しかも主人公は87分署そのもの、あるいは舞台となる架空の都市“アイソラ市”と言うコンセプトなので、特定の誰か1人というわけじゃないんですよね。
でもまあ、全58話のうちほぼすべての作品に登場するスティーブ・キャレラ刑事が主役みたいなもんですが(彼が登場しないのは短編オムニバスの中の1話のみ)、あくまでもコングロマリットヒーロー(複数の主人公)と言う考えが根底にあるので、その回その回で主演が替わるというわけなんです。
そして登場人物の入れ替わりもありました。
50年続いた中で殉職や退職、異動、昇進などもあり、いつの間にかいなくなったものや新しく入ってきたものなんかで顔ぶれも替わっていきます。
全編通して一度しか出てこなかったものや名前しか出てこなかった刑事も多くいます。
これら刑事が入れ替わり登場することで87分署を構成しています。
ただやはり中心となるのは数名で、実際には7〜8人の刑事しか目立ったものはいません。
それでもテレビドラマ版とはえらい違いますね。
話自体も1つの作品の中で関連性のない2つ以上の事件が同時に進行するものも多く存在しました。
いまの刑事ドラマって、こんな形態で話が進みますよね。出演者もやたらと多いし。
僕に言わせれば、やっぱり87分署が今日の警察組織を主役としたドラマの原作だと思うわけです。
ギリギリ20世紀だったかに、単発物で数本制作されたものがWOWOWでやってたんですが、話の構成は昔のスタイルでした。
でもいまの撮りかただったら87分署のスタイルは十分に活かせると思うんですが…
HAWAII FIVE-Oみたいに設定を21世紀の現代に置き換えてリメイクしてもイケると思うんですがね。
何しろ複数の登場人物がそれぞれ中心になって活躍するドラマの原点とも言える作品ですから。
刑事コロンボにも原作があった?
ピーター・フォークが主人公を演じる有名な刑事ドラマ・刑事コロンボですが、この作品はもともと舞台劇でした。
舞台の脚本を元に映像化したのがテレビ初登場となる「殺人処方箋」ですね。
この舞台劇を書いたのはコロンボの生みの親、リチャード・レビンソンとウィリアム・リンク。
つまりテレビでおなじみのコロンボはもともとは舞台のオハナシだったということになります。
舞台劇でコロンボを演じたのは別の役者(トーマス・ミッチェル)で、無論舞台ではコロンボは主人公ではなく、主役である犯人を追い詰めるただの刑事です。
話の舞台もニューヨークと、みんながよく知っているコロンボとは大違いですが、この舞台劇を元にしてピーター・フォーク主演の刑事コロンボが誕生したんですね。
この舞台劇を映像化した「刑事コロンボ・殺人処方箋」ですが、記念すべきコロンボシリーズの第1話と思いきや、タイトルにはコロンボの名前は入っていません。
あくまでも犯人が主役でそれに食いつく刑事との心理・頭脳戦を描いた舞台劇を映像化してみた結果、視聴率が良かったのでもう一つ出してみようとして作られたのが「刑事コロンボ・秒読みの殺人」ですね。
この作品こそがコロンボのパイロット版でこれ以降がコロンボシリーズというわけです。
殺人処方箋ではヨレヨレのレインコートやモジャモジャのヘアスタイル、人を喰ったようなマイペースさと言ったスタイルが確立されていないんです。
映像化されたものでありながらシリーズ物のコロンボとは一線を画す。
舞台のみならず映像ともに「殺人処方箋」という作品そのものがコロンボの原作なんじゃないでしょうか。
刑事コロンボの中に87分署を作品を原作としたものが2つあります。
それが「87分署シリーズ:はめ絵」と「87分署シリーズ:死が二人を」です。
それぞれコロンボでは「新・刑事コロンボ:死を呼ぶジグソー」と「新・刑事コロンボ:初夜に消えた花嫁」として制作されました。
もともとコロンボと87分署は同じ刑事ものでありながらスタイルが全く違います。
そんな話を原作に据えるんだから、この2作品はコロンボの中でも異色のエピソードですよ!