アメリカのドラマで「パイロット版」という呼称をよく見聞きします。
制作側がドラマ化・さらにはシリーズ化を見越して売り込むために作ったものをパイロットフィルムといったもんですが、つまるところ試作品というわけです。
これで人気が得られたら晴れて数話の制作続行、さらに人気が上がればまたまた続きが作られるんですね。
まずは特番として流されるパイロット版。試作だからシリーズになったものとは登場人物とかその名前とか設定とか、若干の違いがみられたりします。
1時間のシリーズではおなじみのオープニングがパイロット版では見られないのはそのためです。
だからタイトルや役者の名前が映画みたいに本編の中に表示されるものは、ほぼ間違いなくパイロット版です。
パイロット版のあるドラマ
海外ドラマのパイロット版の多くは2時間枠で公開されるので、日本では金曜ロードショーや日曜洋画劇場なんかで観ることがありました。
特攻野郎Aチーム
日本では日曜洋画劇場で放送され、初めて観たときは単発のテレビ映画だと思ってました。
もちろんおなじみのオープニングもナレーションもありません。
このパイロット版のタイトルが「必殺!Aチーム」ですよ。
全編通して登場人物の死亡率1%以下なのにこのタイトルは何なん?
まあおそらく話の流れ的に「仕事人」と似た部分があるからでしょうけど…
再放送ではシリーズとおんなじ特攻野郎Aチームになってましたが、オープニングはタイトルが出るまでの一部しかありませんでした。
というのも、パイロット版ではフェイスマンの役をダーク・ベネディクトではなくティム・ダニガンが演じていたから。
ティム・ダニガンもイケメンだったんですけどね、なんでも「ベトナム戦争の手練にしては見た目が若すぎる」と言う理由からベネディクトに変更されたそうで。
おおまかな内容はシリーズと変わりないですが、エンジェルことエミーがAチームを雇って作戦に同行し、最終的にメンバーになるというお話でした。
ナイトライダー
これも最初に日曜洋画劇場で放送されました。
その後数回に渡り2時間スペシャルが同じく日曜洋画劇場で放送されたので、僕はてっきりコロンボみたいに2時間の単発ドラマなんだと思っていました。
でもこれシリーズ化を見越してか、オープニングはパイロット版のときからあったんですよね。
この時は主演のデビッド・ハッセルホフとエドワード・マルヘアーだけしか出てませんが。
もちろん小林清志氏のナレーションもありませんでしたが、シリーズと同じテーマ曲でした。
シリーズとの違いはデボンの名前がパイロット版ではデボン・シャイアーであるのにシリーズではデボン・マイルズになっているということ。
でもこれ原音だけの話で、日本語訳ではオープニングで言ってるようにデボン・シャイアーで通してるんですよね。
ただ話の中では複数回、マイケルがデボン・シャイアー・マイルズって言ってるんですよ。
だからてっきりデボンシャイアー・マイルズ、つまり「デボンシャイアー」でひとつの名前だと思ってました。
特捜刑事マイアミ・バイス
シリーズを数話放送した後にパイロット版の放送がありました。
ニューヨーク市警のタブスが地元マイアミ警察のクロケットと出会い、タブスがマイアミ・バイスに属することになるエピソード。
ヤン・ハマーのオープニングテーマから始まりますが、シリーズのものとはちょっと違いますね。シリーズのテーマ曲から主旋律を抜いたカンジの曲です。
登場人物はシリーズと全く同じですが、トゥルーディー役のオリビア・ブラウンがゲスト扱いでクレジットされていました。
刑事コジャック
マーカス・ネルソン殺人事件と言うタイトルで知られるパイロット版ですが、これって、テレビで見たときにはすごい長ったらしいタイトルだったんですよね。
調べてみたら「刑事コジャック・スペシャル/クライム80ニューヨーク殺人麻薬暴行事件・迷宮入り直前に逮捕された黒人・コジャック刑事は鬼か仏か?」だって…
ああそんなタイトルだったわ!「クライム80ニューヨーク殺人麻薬暴行事件」ってとこだけ記憶にあります!
実在の事件をもとに作ったリアルな描写で人気が出たようですね。コジャックらしい…
登場人物はシリーズとは全く異なり、コジャック以外はパイロット版のみの出演者です。
スタブロス役のジョージ・サバラスやウィーバー役のロジャー・ロビンソン、バイン役のブルース・カービーも出てるんですが、全く違う役どころでした。
各分署から招集された刑事の顔ぶれの中にサーパスティンも混じってましたが、おそらくこのときは名もないモブでしょう…
女刑事キャグニー&レイシー
パイロット版は主人公を演じる役者が違いますよ!
レイシー刑事役のタイン・デイリーはダーティーハリー3の相棒刑事役で出演したことがきっかけで選ばれたようですね。
なのでこの人はシリーズになっても不動でしょうが、シリーズでシャロン・グレイスが演じたキャグニー刑事はパイロット版ではロレッタ・スイットと言う女優さんがやっていました。
パイロット版はかなりあとになってから観たので、最初キャグニーが違う役者がやってるのに「ええ〜!」っと思ったんですが、声はおんなじ吉田理保子さんだったからあまり違和感なかったですね。
話の内容はよく覚えてないけど、テーマ曲はかなり地味だったなあ…歌詞付きの曲だったような。
このパイロットを最初に観てたらおそらくシリーズは観なかったかも…
軽快なオープニングテーマ曲になってよかった。
女刑事クリスティー
このドラマのパイロットもシリーズの後に観ました。
パイロット版の邦題が「血戦!地獄の特捜隊」ですよ!
あ!面白そう!と、タイトルに惹かれて観てみたら…冒頭に出てきたタイトルが「Get Christie Love! 」…
「女刑事クリスティーやんけ!」と、ガクッとなってしまいました。
いや、この番組大好きだったからいい意味でね。
シリーズでチャールズ・シオッフィ演じるリアドン警部の役を、パイロットではダーティーハリー1と3でハリーの理解ある上司・ブレスラー部長を演じたハリー・ガーディノがやっていました。吹き替えもおんなじ田口計さんでしたね。
話の内容は覚えてませんが…
刑事コロンボ
コロンボはちょっと特殊です。
もともとNBCサンデーミステリーの枠で、月1で放送されていた刑事コロンボ。
その1回目の話が「殺人処方箋」ですが、これはパイロットじゃないんですね実は。
殺人処方箋は単発のTVムービーとして、舞台劇として上演された話をピーター・フォーク主演で映像化したものです。
そしてコロンボが主人公の話として2つめに制作された「死者の身代金」こそがパイロット版になるわけです。
そもそもコロンボってテレビ映画の作りだし、オープニングもドラマにかぶせてクレジットが出るしでとくにシリーズとパイロットの明確な差異はないように思えます。
まあ殺人処方箋ではコロンボのスタイル(服装・髪型)なんかはよく知るものとはちょっと違いました。
コロンボ警部は狡猾なやり手のイメージがあったし。
この回のオープニングはデイブ・グルーシンのジャズで、ちゃんとしたテーマ曲やそれをバックにテロップが流れるなど、シリーズとは一線を画していましたね。
死者の身代金でもオープニングはその回のテーマ曲っぽいのがかかる中テロップがでてたので、パイロット版風に作られてはいましたが、この回ではすでにコロンボはイメージ通りの見慣れたものになっていました。
女刑事レディブルー
この番組も日曜洋画劇場枠で放送されました。
冒頭、重々しいカンジでタイトルや出演者が表示され、バックに流れるパイロット版のテーマ曲も、シリーズの歌詞付きの軽いものじゃなく重い曲でした。
内容も、レディブルーことケイティ・マホーニー刑事が同僚刑事と不倫していて、その刑事が殺されるといったちょっと重苦しい話でした。
シリーズになるとは思ってなかったですね。
刑事スタスキー&ハッチ
実はこのパイロット版はDVDで初めて観ました!
DVDボックスシーズン1に収録されてたんですよ!
この幻のパイロット版が観たいがためにDVDボックスを買ったようなもんです。
シリーズのオープニングでもパイロット版のシーンがでてきますが、スタスキーの髪型がヘンです!
モジャモジャフワフワではなく、短いぺたんこの髪型です。
使ってる銃も違います。
ハッチも使用拳銃が違うんですが、彼の場合はシリーズ初期の何話かまではパイロットと同じものを使ってました。
決定的に違うのはドビー主任をシリーズとは別の役者が演じているということですが、なぜか日本語吹き替えでは名前も変えられていて、ヤング主任となっています。
チャーリーズ・エンジェル
第1シーズンのエンジェルがそのまま登場するパイロット版は「チャーリーズ・エンジェル:ぶどう園乗っ取り殺人事」と言うタイトルで放送されました!
オープニングもシリーズのとは違い、軽い感じのテーマ曲をバックにエンジェルの3人が順に紹介されるというもの。
テニスや水泳、乗馬をしているエンジェルのもとに電話がはいって「エンジェル、仕事の時間だよ」と、チャーリーが言ったところで出演者の名前が各々テロップされました。
シリーズとの違いは、この回のみボスレーの他にウッドビルというチャーリーの部下が登場するということ。
この回では、チャーリーに会えないのかときくジルに対し、ウッドビルが「会えるのは私とボスレーだけ。それは契約のときに話したはずだよ」と、ちゃんと視聴者にチャーリー=謎の人物という設定を語っています。
パイロット版はボスレー要らないんじゃないのというくらいウッドビルが目立ってましたね。
オープニングが終わるのにかぶせて「私めは今回も最前線には出ず、書類仕事ですかな?」「すまないねボスレー」といった旨の、ボスレーはあまり出てきませんというフラグの立つような会話が初っ端からありました。
パイロット版はウッドビルだけでよかったんじゃないんでしょうか…
こちらブルームーン探偵社
“天使の微笑探偵社”の社長・デーブが、その探偵社のオーナーで元・売れっ子モデルのマディと初めて顔を合わせ、赤字続きの探偵社なんか取り壊すと息巻いていた彼女を口説いて「君と僕と2人で探偵をやろうよ!」ということになるまでのオハナシ。
ブルームーン探偵社誕生秘話というわけですね。
このパイロット版、NHKで2回放送されました。
そしてその2回目のエンディングの後にまだ続きがあって、1時間のシリーズの放送が決定したという予告編が流れたんですね。
主演のブルース・ウィリスも当時は日本じゃほとんど無名でしたからね。まさかシリーズ化するとは思わなかったですよ。
この予告見て、パイロット版を気に入ってただけに飛び上がって喜びました。
受付・雑務のトピストもパイロット版から登場してるし、シリーズと違うところというと日本語吹き替えの“パイロット:トピストさん”が、“シリーズ:トピストくん”に替わってるくらいでしょうか。
マイアミ・バイスやナイトライダーのように、超音速攻撃ヘリ・エアーウルフや俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイなんかも、最初からシリーズ化を見越して作られてたのかも知れません。
このふたつは金曜ロードショー枠で放送されました。
エアーウルフなんて、ビデオリリースされてたものとテレビ放送分とではラスト部分が違うんですよ。
金曜ロードショーで放送されたものは、ホークとアークエンジェルの取り引きのシーンがありシリーズをにおわせる終わり方ですが、ビデオ版の方ではそれがカットされてるんです。
最初から後々の展開について話すシーンを入れてるってことはを、エアーウルフの場合はパイロットではなく特番としての第1話という感じですかね。